第35回 リスクプレミアムはなぜ存在するのか(1) ~田渕直也のトレーディング・テキストブック~
第35回 リスクプレミアムはなぜ存在するのか(1)
リスクプレミアムとは、リスクの対価のことです。こういうと簡単に聞こえますが、リスクプレミアムがなぜ存在するのかは、長く謎とされてきました。
経済学の基礎である合理的選択理論では、ある投資商品が生み出す価値の期待値だけが判断のカギを握ります。リスクが高い金融商品でも、期待リターンがプラスならば、何度も繰り返していくうちに大数の法則により次第に収益が姿を現し、さらに回数を重ねていくことによってその収益は安定してくるようになります。ですから、リスクの大きさは、金融商品の価値(価格)には影響を与えないはずなのです。
ところが、現実の市場では、ある商品の価格は期待値だけでなく、リスクの大きさによっても左右されます。リスクの大きな商品は、期待値に比べると割安な価格で取引され、リスクの小さな商品は割高となります。この価格差が、リスクの対価であるリスクプレミアムに他なりません。このリスクプレミアムの存在理由は、今ではすでにご紹介したプロスペクト理論によって説明することができます。