第36回 リスクプレミアムはなぜ存在するのか(2) ~田渕直也のトレーディング・テキストブック~
第36回 リスクプレミアムはなぜ存在するのか(2)
プロスペクト理論の概要はすでに説明しましたが、ここで簡単に振り返ってみましょう。下の図(再掲)は、利益と損失に対する人の満足度(あるいは落胆)の度合いをモデル化したものです。
利益のエリアでの上に膨らんだ曲線は「利益が出るとすぐに利食いたがる」ことを、損失のエリアでの下に膨らんだ曲線は「損すると塩漬けにしたがる」ことを表しています。利益と損失が入れ替わる(x軸のゼロ近辺)で、効用曲線の傾きが変わっているところは、利益から得る満足度よりも、同額の損失から受ける落胆の方が大きいことを示しています。ここで重要になるのが、最後の点です。プロスペクト理論によれば、人は利益を追求することよりも損失を回避することに重きを置くことになります。
このリスクプレミアムの存在は、投資理論において決定的に重要な役割を担いますが、同時に常識に反するいくつかの重要な法則を導き出します。次回は、そのあたりを詳しく見ていきます。