シグマベイスキャピタル (SBCC) 清水正俊、ジュネーブPhillip Glanville Oxnam、そしてヘッジファンドの仲間達 (第5回/全100 回)
ヘッジファンドの重要な成績ポイントは、言うまでもなくリターンですが、リターンは運用技術の巧拙で左右されます。その根幹をなすものが、ヘッジ技法(手法、技術)とギアリング(レバレッジ)です。
(1)ヘッジ技法
ヘッジファンドの手法には様々な種類があります。相場下落に備えるための空売りは代表的な技法ですが、どの程度の空売りが最適かの判断も重要な中身です。相場全体の動きと逆行する特性を持つ銘柄、商品を保有するのもヘッジ技法のひとつです。また、株、債券、外国通貨、商品等をうまく組み込んだバスケット(ポートフォリオ)を保有するのもヘッジ手法のひとつです。
(2)ギアリング
ヘッジファンドは様々な理由から、借入も行っています。空売りをすれば、必然的に借入が発生します。借入金が大きい(ギアリングが大きい)ほど、運用金額が大きくなりますから、これがリスク・リターンの大きさに反映して来ます。
ヘッジ技法とギアリングは、自動車の運転に例えれば、ブレーキとアクセルです。両方の操作次第で、悪路を走破も出来れば、普通の途で脱輪してしまうこともあります。ブレーキとアクセルの操作技術の巧拙は、ヘッジファンドの世界ではシャープレシオと呼ばれる数字で評価されています。
シャープレシオの計算は次のとおりです。なおこの指標は、投資理論の大家として有名なスタンフォード大学のウイリアム・シャープ教授が提唱したものです。
シャープレシオ = (リターンー金利 )÷ 標準偏差(=リスク)
簡単な例でシャープレシオを理解しておきましょう。Aさん、Bさん、Cさんの3人がそれぞれ投資A、投資B、投資Cをした結果が下の表に示されています。「投資のリターンとリスク」という観点では、誰が一番優秀だったでしょうか。なお、ゼロ金利時代ですから、金利は0%とします。
投資Aと投資Bを比較すると、投資Aの方が高いリターンを実現しましたが、リスク指標である標準偏差も高いので、ハイリスク・ハイリターン型の投資と判断されます。これに比べ、投資Bはローリスク・ローリターン型の投資です。リスクが高ければリターンが高くて当たり前と言えるでしょう。失敗すれば大きな損失も覚悟の投資だからです。
シャープレシオはこの二つの投資の優劣を判断する指標です。ともにシャープレシオが2.0ですから同点です。投資Cはシャープレシオが4.0ですから3人中、一番優秀と判断されます。変動の小さい(=標準偏差が小さい)相場を相手に、Bさんと同じリターンを挙げたCさんの腕は賞賛されてしかるべきなのです。シャープレシオは、投資の「質」を評価する指標です。リスクとリターンは、腕以外に相場次第のところもあり、毎年変動が激しいのが常ですが、シャープレシオにはそれぞれのヘッジファンドの長期的特徴が反映されます。そのヘッジファンドの「体質」と言うことが出来るものです。
つづく
<シグマからのおしらせ>
本ブログでは、以下の連載が交互並行でスタートしています。
*エベレストに賭け、相場に生きた男 中島寛の物語(全20回)
*金融マーケット今昔物語(全20回)
*ブーメラン投資入門・初級講座(全20回)
*ブーメラン投資中・上級講座(全20回)
*シグマベイスキャピタル(SBCC)清水正俊、ジュネーブPhillip Glanville Oxnam、そしてヘッジファンドの仲間達:SBF組成に向けて(全20回)
*シグマ個人投資家スクール分校開業・経営講座(全20回)
<執筆者>
清水 正俊 http://www.sigmabase.co.jp/index/lecturer.html
シグマベイスキャピタル株式会社(SBCC)代表取締役社長
シグマインベストメントスクール(SIS)学長兼シグマ個人投資家スクール(SIIS)学長
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