第43回 市場の瞬間的ミスプライスを突く ~シグマ個人投資家スクール~
第43回 市場の瞬間的ミスプライスを突く
今回は、イベント時の瞬間的ミスプライスについて見ていきましょう。瞬間的なミスプライスというのは、何か大きな出来事(イベント)が起きた時に、市場が判断を狂わせて、合理的とは言えない価格を付けてしまうことを指しています。市場のミスプライスという点では、前回までのアービトラージやリラティブバリューと同様ですが、一応分けて考えたいと思います。
ヘッジファンドには、この要因に照準を合わせたジャンルがあって、イベントドリブンと総称されています。イベントとして代表的なものには、合併買収(M&A)や、破たん(ディストレスト)があります。
合併買収が発表されると、一般的には買収する側の企業の株価が下がり、買収される側の企業の株価が上がります。合併が成就すると両者の株価の比率は合併比率に収れんしていくわけですが、合併が常に成就するとは限りません。条件面で折り合いがつかなかったり、独占禁止法をクリアできずに断念するということがあり得るからです。市場は、このような複雑な状況を正しく価格に織り込むのに手間取るときがあります。そこで、素早く合理的な分析をすることができれば、市場の先回りをして、その一瞬のミスプライスを突くことができるというわけです。
こうした手法は、リスク・アービトラージとも言われています。ちなみに、クリントン政権で財務長官を務めたロバート・ルービンは、ゴールドマンサックス時代にこのリスク・アービトラージで活躍し、やがてゴールドマンのトップにまで上り詰めた人物です。
市場の瞬間的なミスプライスは、企業破たんのケースでさらに典型的に生じます。企業が破たんすると、一般的なケースでは株式は紙くずとなりますが、債券は紙くずとはなりません。債券などの債務については、全額の返済が無理となっても、残余財産から可能な限り返済するのが普通だからです。しかし、多くの投資家は『破たん』した債券を保有したくないために、どのくらい回収できそうかというような分析もそこそこに、破たん債券を投げ売りします。機関投資家の場合は、保有している債券が破たんした場合には即時に売却することを社内規定で定めていることが普通ですし、そうした規定がないとしても、破たんした債券など保有していること自体がとても受け入れがたく、値段も構わずに一刻も早く処分してしまいたくなるのが人情というものです。
こうして破たん債券は、合理的に回収が見込まれるよりも割安な価格で売りに出されることになります。そこにチャンスが生まれるわけです。破たんした債券はもともと保有していた人にとっては『不良』資産ですが、それを割安な価格で手にできる投資家にとっては、とても収益率の高い優良な投資資産になります。
破たんのような大きなイベント時に、一部の投資家が合理的とは言えない行動をとるときに、合理的な投資家は大きな収益機会を得ます。こうした機会を手にするのは多くの場合、米国勢を中心とするヘッジファンドです。残念ながら、日本勢は、割安な価格で投げ売りを迫られる立場になるケースがほとんどだと思います。そもそも、社内規定が事細かに整備され、何かが起きると責任の所在に関心が集まる大企業は、こうしたイベント時に正しく行動することが難しいということもありますが、破たんや不良資産という概念を忌み嫌う心理が日本人の場合は特に強いということも言えるかもしれません。
イベントドリブンは、ある意味で、生き馬の目を抜く米国金融業界の象徴的な投資手法といえるかもしれません。しかし、イベントドリブンは合理的な分析能力が高い確度で収益に結び付く数少ない分野です。一般に、投資は偶然に左右される部分が少なからずあるために、その成功は実力だけでは何ともならない部分があるのですが、イベントドリブンは実力が比較的素直に反映される投資手法であり、米国の合理的精神にマッチした手法なのかもしれません。
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